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高血圧の日 2013.05.17 Friday | 08:57
久しぶりのお知らせになってしまいました。
今日は「高血圧の日」です。患者さんだけではなく、広く一般の方にも高血圧に関心を持ってもらおうと、日本高血圧学会が中止になり(http://www.jpnsh.org/general_0517.html)、一斉キャンペーンを行っています。

高血圧の診療をしていて思うことですが、血圧のことを皆さん本当によく知っていらっしゃいます。それから自宅でしっかり測っている方が実に多い!世界でもこれほど血圧に理解のある国は無いんじゃないかと思います。
ただその反面、治療目標まで達している方は未だに十分ではないことも問題として指摘されています。血圧は年齢や持病にあわせた目標値があります。薬を飲むにしても今は種類が豊富で、合うもの、合わないものがあります。個人に合ったオーダーメードの高血圧治療がなされるべきです。

高血圧の治療を受けている方もいままで血圧に関心が無かった方も、今日は血圧計に腕を入れてみましょう。


日本高血圧学会総会に参加してきました 2012.09.22 Saturday | 00:30
 9月20日〜22日の日程で、第35回日本高血圧学会(名古屋)が開催されています。今回の学会には昨日1日しか出席できなかったので、なかなかハードなスケジュールでしたが、実り多き学会でした。通常、学会総会というと基礎研究の発表や講演が多いものですが、高血圧学会総会は実際の診療に役立つ内容が多く、大変勉強になりました。

 

今回、私自身は高血圧の新しい治療体系近未来の高血圧治療について勉強することを目標に参加してきました。現在の高血圧治療ですが、2009年に日本高血圧学会から発表された高血圧ガイドラインに基づいてなされています。このガイドラインは高血圧専門医以外の医師にも非常によく浸透していて、国内においては高血圧治療の標準化はまず成功していると云っていいと思います。しかし、4000万人の患者さんのうち3/4(3000万人)の患者さんが未だ十分に降圧されていないという現状を考えると、「高血圧の克服」という点では不十分と考えざるを得ません。画期的な新しい治療薬も出尽くした感もあり、高血圧治療は将来に向けてまた一歩先に踏み出す時に来ていると思います。

今回たくさんのプログラムの中から興味深い内容がありましたので、紹介いたします。

 

最近の高血圧の話題は交感神経と血圧の関係です。自律神経である交感神経の働きが活発になることは、昔から高血圧の成因のひとつと云われています。みなさんは自律神経と血圧の関係というと、ストレスがかかると血圧があがる・・・というような漠然とした印象を持つと思いますが、じつはもう少し科学的な検証がなされていて、実際に交感神経がどのように働くとどういったメカニズムで血圧が上昇するのかということもわかってきました。満を持して2009年にオーストラリアの研究グループから、腎臓の動脈にある交感神経を取り除く(実際には焼き切るという方が正しいかもしれません)ことによって血圧を下げるという画期的な治療が報告されました。マスコミなどの報道でも取り上げられ、高血圧患者さんは薬を飲まなくてもよくなる・・・といったセンセーショナルな取り上げられ方をしていましたのでご存知の方も多いと思います。日本でも実際に臨床試験(広く患者さんに治療をおこなう前にその効果と副作用を検討すること)が始まることが決まりました。さてこの治療法は、本当に血圧の薬がいらなくなるという夢の治療なのでしょうか?結論からいうとまだ検討すべき課題が多い治療であると云えると思います。まず対象患者さんですが、難治性高血圧(たくさんの降圧薬を使っても血圧が下がり切らない)の患者さんです。確かに血圧は2年ほど経過しても30mmHgほど下がっていますし、大きな副作用はないという報告です。しかし軽症の高血圧患者さんが薬を必要としなくなる治療法としては検討されていませんし、また降圧効果がどの程度持続するかも未知数の部分があります。交感神経の働きを無くしてしまうことが全面的によいことなのかも検証しなければなりません。高血圧のように薬を飲みさえすればうまくコントロールできるといった確立した治療法がある病気に関しては、有効性はもちろんですが副作用には特に大きな配慮が必要です。この治療法が近視治療のレーシック治療のように大きな福音をもたらすものであればいいと思いますが、たくさんの高血圧患者さんに安全で安定した効果を提供できるようになるまでには、もう少し時間が必要なようです。

もうひとつ、高血圧ワクチンによる治療についても発表がありました。ご存知の通りワクチンはインフルエンザといった感染症の予防に多く使われています。最近ではがんワクチンなど感染症以外の病気でも進行を抑えるために使われています。高血圧でも原因となる体内物質に対するワクチンを投与して、一定期間血圧の上昇を抑えたという報告がありました。ワクチンを定期的に投与すればワクチンの効果が持続している間は血圧の上昇が抑えられる・・・というものです。個人的にこの治療には可能性を感じました。安全性と効果が確認できれば、入院することなく外来で治療できるので患者さんにも受け入れやすいと思います。まだ人に応用する段階にはなっていませんが、動物実験と同じような効果が得られれば、前段の交感神経の除去と同じように夢のある治療になり得ると思います。

 

こういった新しい治療は早ければ数年先には実際に必要とされる患者さんに行われるようなるかもしれません。しかし今広く行われている降圧薬による治療には、効果と安全性にしっかりとした歴史があります。未来に希望をもちながら、今血圧が高い方はしっかり治療をしなければなりません。今から60年前を考えれば、高血圧には今のように有効な薬が無く、瀉血治療(血を抜く)や精神療法に頼っていた時代です。1日1回薬を飲めば、脳卒中や心臓病の予防ができるなんて、その頃から比べればマジックをみているようなものなのです。そういったことからは、今の高血圧治療は相当にみなさんのお役に立っているはずです。夢の治療法が完成するまで、がんばって一緒に治療を続けていきましょう。

 

今回、学会に参加していろいろな話を聞くことができました。その中でとても心に残ったフレーズがありました。ある医師の講演の中で出されていたデータですが、患者さんは治療をはじめたり、継続していく中でどこからの情報を重要視しているかというものです。私は最近のご時世からインターネットやテレビ、あるいは雑誌だと思っていましたが、ほとんどの患者さんは主治医の言葉をもとに治療をしているそうです。これだけ情報がたくさんあふれている時代でも、私たち医師の言葉を信じて治療してもらっていることにあらためて深い感慨を覚えました。

患者さんの期待に応えられるように、日々勉強です。



CKD診療ガイド2012 2012.08.18 Saturday | 13:15

ちょうどこの7月にCKD(慢性腎臓病)診療ガイドが改正されました。先月、日経メディカルさんからこの件について取材をうけましたので、改正点を中心に触れてみたいと思います。

 

そもそもCKDとは、腎機能の低下とタンパク尿などの尿所見が、3ヶ月以上継続する状態と定義されており、日本にはこの状態の患者さんが約1300万人いると推定されています。CKDの多くの場合、症状ははっきり分かるものはなく、健診で尿検査異常や腎機能の異常で発見されることがほとんどで、あまり積極的に診療されていないのが現状です。CKDの状態を放置しておくと、

①次第に腎機能が低下して最後には慢性腎不全となり、透析治療が必要となること

②心臓疾患(狭心症・心筋梗塞・心不全など)や脳卒中(脳梗塞・脳出血など)の疾患を高率に発症すること

から、早期に発見して対策をとることの必要性が、世界的にいわれています。

日本でも透析患者さんが30万人を超え、より一層の腎臓病対策の必要性から、腎臓学会が中心となり、精力的にCKD対策に取り組んでいます。しかしながら“メタボ”のように国民全体に広く普及するには至っておらず、まだまだCKDを知らない方が多いという状況です。

 

そんな中、3年ぶりにCKD診療ガイドが改正されました。CKD診療ガイドとは、CKD患者さんを診る上で大事なポイントが書かれている医師向けのお手本のようなもので、腎臓病の専門医ではない医師にも日常診療に役立ててもらう目的で刊行されたものです。腎臓病も大事だけれども、他の病気があるとつい腎臓病は後回しになってしまう傾向があります。CKDの診療ではここがとても重要な部分で、もう少し腎臓病にも目を向けてもらいたいということがこの診療ガイドの重要なところです。

 


さて今回の改正ポイントです。

   CKD患者さんを診た時の重症度分類が変わりました。従来の腎機能(推定GFR値)だけの分類から、蛋白尿の程度を加えてリスクの層別化を行っています。この分類によって患者さんに将来起こりうるリスクがより詳細に分かるようになりました。

   腎機能の評価についてeGFRの計算式が若干変更になりました。また筋肉量によって左右される血清クレアチニン(Cr)値の他に、シスタチンCによる腎機能の評価方法についても触れられています。eGFRはあくまでも腎機能の指標なのですが、より詳細に腎機能が評価できるようになりました。

   高齢者のCKD診療について、特に高血圧治療の点から変更がありました。特に高齢者においては腎機能の低下につながるような「過剰降圧」が見られることが報告されており、収縮期血圧110 mmHg未満への降圧を避けるようにとの記載が加わりました。また降圧薬の選択にも変更が加わりました。

 

今回のCKD診療ガイド2012は診断から治療まで従来のものよりもよりちょっと専門的になっている感があります。重症度分類などは若干複雑になっており、腎臓病専門ではない医師に繰り返しこの診療ガイドを開いて読んでもらえるかという懸念はあります。

CKDを患者さんに理解いただくには、まだまだ啓蒙不足の感が否めません。腎臓病を専門としていない医師や患者さんに広く啓蒙していくことは両輪のように同時に行わなくてはなりません。尿に異常があったり、腎機能に異常があると云われた方には特に、CKDについて関心を持っていただきたいと思います。

 


日経メディカルは医療従事者向けに発行されている雑誌ですが、興味をお持ちの方は、8月号に記事が出ていますので、読んでみてください。

 

CKDについて啓発のための動画サイトが(http://www.ckd-ckd.jp/)あります。たくさんの方に関心を持ってもらうように、プレゼントが当たるキャンペーンも行っています。どうぞ一度ご覧になってみてください。



多発性嚢胞腎・・・まとめ 2012.06.16 Saturday | 12:44

遺伝

  両親のどちらかがこの病気の場合、1/2の確立で遺伝する疾患です(生まれたお子さんが誰も病気にならない可能性もありますし、全員が病気になる可能性もあります)。

   

症状

・30歳代までは通常無症状で経過します。

・嚢胞が大きくなるにつれて、腰や背中の痛み腹部膨満感(お腹がふくらんでくること)が出ることがあります。

  嚢胞内の出血や感染によって、急激に腹痛や腰背部痛が出ることがあります。

 

診断

・診断は家族歴(血のつながった方にこの病気の方がいるかどうか)と画像診断CTMRI・超音波)で行います。診断や重症度・進行度の評価はCTMRIが超音波よりすぐれています。

一般的に遺伝子検査は行いません。また両親がこの病気の場合でも、小児期に診断のための検査を行うことは慎重に検討すべきです。

 

腎機能

・70歳までに約半数の方が腎不全となります。30〜40歳代で腎機能の異常が出始めます。

 

合併症

脳の血管に動脈瘤ができることがあります。破裂した場合にはくも膜下出血などを起こしますので、この病気と診断された場合には、脳動脈瘤の有無を確認するためにMRAMRアンギオグラフィ)の検査を行います。

肝臓にも嚢胞ができることがあります。肝機能の低下についての心配は少ないのですが、嚢胞が大きく圧迫症状が強い場合には、治療を検討します。

・嚢胞に関する合併症として、嚢胞感染、嚢胞出血、尿路結石があります。

・他の合併症として、大腸憩室、心臓弁膜症などがあります。

 

治療

・嚢胞自体をなくしてしまう根本治療はまだ確立されていませんが、複数の薬剤で嚢胞の増大を防ぐ効果が検討されています(臨床治験中)。

・腎機能が低下した場合の治療は、他の腎臓病に準じて行います。高血圧を合併することが多いので、食塩制限を含めて早期からしっかりと血圧管理を行うことが大切です。

・腎臓や肝臓の嚢胞が大きい場合に、動脈塞栓術(嚢胞を栄養している血管を閉じてしまう)や嚢胞穿刺術(嚢胞に針を刺して嚢胞液を吸引し、小さくする)などが行われています。残っている臓器の機能もさらに低下してしまう可能性もあるので、治療にあたっては慎重な検討が必要です。

 

嚢胞腎といわれたら・・・

この病気では腎臓の機能が低下することが大きな問題ですが、多発性嚢胞腎であっても、全ての方が腎不全になるわけではありません。生涯透析治療をしないですむ方も多くいらっしゃいます。一方で、遺伝疾患ということで、誰にも相談できずに悩んでしまっていたり、できることなら隠してしまいたいという方も多いと思います。しかし、この病気はまず知ることが一番大切です。この病気を知らずに、くも膜下出血のような大変な病気になってしまうことはとても残念なことです。腎臓専門医に相談しながら、一歩ずつ病気と向き合っていくことが大切だと思います。




多発性嚢胞腎・・・その2 2012.06.15 Friday | 11:47
 多発性嚢胞腎の診断

1.   診断は問診と画像診断で行います。家族(血縁者)に同じ病気の人がいた場合、CTまたは超音波で嚢胞の存在を確認します。同時に尿検査と腎機能を確認します。

2.   腎機能の低下に影響する因子として、①高血圧②タンパク尿③性別(男性の方が腎機能は早く低下するとされています)、④腎臓の大きさ・腫大速度などがあげられます。このようなリスクをもった方には継続して検査を行います。

3.   多発性嚢胞腎の診断の次に必要なことは合併症の検索です。特に脳動脈瘤の有無を確認することが最も重要です。脳動脈瘤のスクリーニング検査にはMRAMRIを使った血管撮影)が適しています。MRAで脳動脈瘤が認められた場合、あるいは疑わしい場合にはカテーテル検査を行うことがあります。

4.   遺伝子診断についてはまだ一般的ではありません。原因遺伝子であるPKD1, PKD2の遺伝子解析が簡単ではなく、不確実な部分が多いからです。海外では一部、商業的に行われてはいますが、診断の確実性が確認できていない現時点では、行わないことが一般的です。

5.   小児についてですが、根本治療がなく、また小児期には腎機能も問題ないケースがほとんどなので、通常検査を積極的に行うことはしません。しかし高血圧を合併している場合や、尿所見がある場合には早期からの治療の必要性を考え、診断することがあります。今後、根本治療法が確立し、かつ遺伝診断の確度が上がった場合には、積極的に遺伝子検査によって診断する必要が出てくるかもしれません。小児期以降は、脳動脈瘤の合併や破裂比較的若い年齢でも起こりえますので、成人してから検査を行うかどうか、検討します。



多発性嚢胞腎の治療

1.   残念ながら現時点では、嚢胞の縮小や消失を目的として、確立した治療法はありません。しかし進行を遅らせるための治療は重要です。

2.   進行を遅らせる治療として最も大切なことは高血圧の制御です。高血圧を合併する患者さんの腎機能低下速度は速いことが知られていますので、適切な薬剤でしっかり治療をすることが必要です。

3.   食事療法についてですが、慢性腎炎のような低タンパク食を中心とした食事療法については効果が限定的であるという報告もあります。しかし食塩制限をすることや、タンパク質の過剰摂取を控えることは他の腎臓病と同様に重要です。腎機能や尿所見、血圧の状態を評価して個人個人に必要な食事管理をすることが必要です。

4.   厳密には治療とは云えませんが、しっかり飲水を行うことで嚢胞の発育を抑えたという報告があります。必要以上に飲むことはありませんが、真夏でもしっかりおしっこが出るように飲水をしましょう。またカフェインの過剰摂取はよくないとされています。

5.   肝臓にできた嚢胞の治療として、動脈塞栓術(嚢胞を栄養している血管を閉じてしまう)や嚢胞穿刺術(嚢胞に針を刺して嚢胞液を吸引し、小さくする)が行われることがあります。合併症もありますので、手術を行うかどうかは慎重に検討しなくてはなりません。

6.   脳動脈瘤が見つかった場合には、治療を行うかどうか脳外科の先生と検討します。治療は直接動脈瘤にクリップをかける方法と、動脈瘤にコイルを詰めてしまう方法があります。治療を行うかどうかについては、一般的には大きさが基準になっていますが、家族歴高血圧などの合併症の有無、その他のリスク因子を考えて検討するべきです。


参考資料

1.   多発性嚢胞腎診療指針(厚生労働省進行性腎障害調査研究班)日本腎臓学会誌 2011

2.   多発性嚢胞腎の全て(東原英二監修)インターメディカ刊



多発性嚢胞腎・・・その1 2012.05.28 Monday | 17:38
 日本で慢性腎不全になる比較的多い原因として多発性嚢胞腎(たはつせいのうほうじん)という病気があります。この病気は腎臓に嚢胞という“水のたまった袋”がたくさんできてしまうことによって起こります。この嚢胞は初期のうちは何も症状がないのですが、年齢を重ねて、数が増えたり大きくなってくると腎機能が低下してきます。この病気で腎不全になり、透析を必要とするまでには比較的長い年月がかかります。最初の頃は自覚症状が少なかったりするので、病気に気づくことが遅くなりがちですが、早めに診断しておかないと厄介な病気です。

この病気の特徴として大きく3つのことがあげられます。

1.腎機能

約半数の方が60歳代までに透析療法を行うような腎不全になるということが報告されています。このように腎機能は比較的高齢まで保たれる方が多いので、昔はあまり問題になることがなかったのですが、近年平均寿命が延びてくるにつれて、この病気の深刻さが認知されるようになってきました。

2.遺伝疾患

この病気は常染色体優性(じょうせんしょくたいゆうせい)という遺伝様式をとります。このことはお父さんとお母さんのどちらかがこの病気の場合、ふたりにひとりのお子さんがこの病気を遺伝してしまう確率があるということです(注:あくまでも確率なので2人のお子さんがいらしても2人とも病気にならないこともあります)。

3.脳動脈瘤の合併

腎機能を損なう以外にいろいろな合併症を伴うことがあります。合併症として脳動脈瘤は特に重要です。脳動脈瘤は脳にできる血管のこぶです。脳動脈瘤は通常の血管に比べると破れやすく、破れてしまった場合にはくも膜下出血を起こします。くも膜下出血は脳卒中の中でも死亡率の高い病気で、約1/3の方が死亡に至ります。脳動脈瘤の破裂は若い方でもおこりますし、多発性嚢胞腎に合併する脳動脈瘤は破裂しやすいという報告もあります。


この病気は、日本では1000人に1人とも4000人に1人とも云われており、正確な患者数が把握できていません。しかしこの患者数は決して少ないものではありません。自覚症状に乏しいことなどで、まだ病気に気づいていない方も相当数いらっしゃるということも考えられます。

最近は健診や人間ドックで発見されることも多くなってきましたが、腎機能が低下する以外にも脳動脈瘤を合併しやすいこの病気を早期診断することは非常に重要です。ご家族、親類に透析患者さんや、くも膜下出血や脳動脈瘤の患者さんが複数いる場合には一度検査をされてはいかがでしょうか。

 

日本腎臓学会より、わかりやすく解説した資料が出されています。

http://www.jsn.or.jp/jsn_new/news/PKD_manga.pdf



IgA腎症・・・よくある質問Q&A 2012.05.18 Friday | 16:51

IgA腎症は治りますか?

IgA腎症は腎臓の組織を診て診断をしますので、尿の異常が無くなっても治ったという判断はできません(寛解といいます)。また、一度壊れてしまった糸球体(硬化糸球体)が元に戻ることはないので、完全に元通りになるという考え方はできません。しかし、尿所見を正常化して、それを維持することは腎炎の進行を抑えるために、また、腎機能を保持するために重要なことです。


 ★妊娠はできませんか?

慢性腎炎患者さんの妊娠・出産については、日本腎臓学会が1997年に発表した「腎疾患患者の生活指導・食事指導に関するガイドライン」2011年に発表されたIgA腎症診療指針第3版」に準拠してお話がされると思います。腎臓組織の所見、尿タンパク量、腎機能(eGFR)、血圧をみて、重症度が高くなるにしたがって、注意や管理を厳しく行うということになっています。

妊娠中の母体や胎児の管理体制は、以前に比べて格段によくなっています。腎臓の状態がしっかりと把握できていれば、ひと昔のように「腎臓が悪い人は妊娠できない」・・・などと頭から云われてしまうことは少なくなっていると思います。妊娠の希望がある場合には、あらかじめ主治医とよく相談して、準備をしておくことが必要です。

 

★運動は制限されてしまいますか?

運動についても妊娠と同様に指針が示されています。軽度のIgA腎症の場合であれば全く運動制限を設ける必要はありません。しかし症状が重くなるにしたがって、運動量をどうするかが考慮されます。私の場合外来では、腎不全状態ではなく、尿タンパク量も安定していれば、運動に関してあまり多くの制限を設けることはしていません。ストレス解消メタボ対策にも運動は有効ですから、適度な運動は効果的です。ただし、真冬や真夏に激しい運動をすることは避けた方がいいと思います。

 

★自分の腎臓の機能を知りたいのですが?

腎機能を評価するには血清のクレアチニン(Cr)を使いますが、年齢や性別によって数値の評価が変わってくるので、画一的な腎機能の評価が難しい場合があります。日本腎臓学会が中心になって、血清クレアチニン値から腎機能を推定eGFR)する計算式を作成しました。このeGFR値が60」を下回るようであれば、腎機能が低下している可能性があります。

*以下にアクセスすると早見表が見られます。(日本腎臓学会HPより)

http://www.jsn.or.jp/jsn_new/iryou/kaiin/free/primers/pdf/CKD-hayami.pdf

腎臓ネットHP上で、自分のクレアチン値、年齢、性別を入力すると計算してくれます。

http://www.jinzou.net/



IgA腎症について・・・まとめ 2012.05.18 Friday | 16:25

全部で4回にわたってIgA腎症の解説をしました。もう一度順を追ってまとめてみましょう。


1.   腎炎と気づく

腎炎と知るきっかけはほとんどが健康診断の尿検査です。たかが尿潜血、タンパク尿と思わず、異常といわれたら再検査を受けましょう。


2.   腎炎の診断

早朝尿(朝一番の尿)や繰り返しの尿検査でも異常が出たら、腎炎なのか他の病気かを見分けた上で、腎生検をすべき状態かを検討します。腎生検は病気の診断のために必要ですが、行う時期も重要です。自分自身の生活設計も考えて決めましょう。


3.   腎生検

腎生検は行うことそのものが重要なのではなく、その評価が最も重要です。診断は標準化されつつありますが、腎生検の組織は誰でも同じように評価できるわけではありません。また治療方針も医師によって異なったりもします。施設を選ぶ際には複数の選択肢の中から選べるとよいと思います。


4.   治療

IgA腎症の治療は患者さんの状態によって変わってきます。使える薬、使えない薬、使わない方が良い薬、ひとによってさまざまです。焦る必要はありません。じっくり話し合って、考えて治療を決めましょう。もうひとつ重要なことは通院の継続です。いったん寛解状態(尿タンパクや血尿が消失すること)となっても、また尿の異常が出てくることがあります。病院に通い続けることで、異常を早くに察知できます。よくなっても見続けてくれる医師と信頼関係を築くことが大切です。



自分がIgA腎症患者だったら・・・と患者さんを診るたびに考えます。

治療はひとつではありません。IgA腎症はこの治療をすれば絶対に大丈夫という方程式があまだありません。患者さんによって、腎臓組織の状態や、他にもっている合併症薬の副作用も考慮して治療を考慮することが大切です。また、患者さんの今おかれている立場など、社会的な背景も考えて治療するべきだと思っています。私自身が患者だったら、そんな選択肢を与えてくれる医療を受けたいと思っています。

 

IgA腎症の治療で一番大切なことはなんでしょう?とよく聞かれます。私は、なんでも相談できる医師を見つけることが、もっとも大切な処方箋だと思っています。フランス留学中に私が最初に勤務した病院は、IgA腎症をはじめて報告したベルジェ先生が在籍されたネッケ病院(Hopital Necker)でした。当時も今も世界中でこの病気の原因や治療の解明のために精力的に研究が行われています。一番適した治療を、患者さんと一緒になって考えていくことが一番重要です。

 

質問等があればお気軽にお訪ねください。



IgA腎症の治療 2012.05.14 Monday | 16:19

IgA腎症と診断されたら、腎生検の結果、尿所見、血圧などを参考に治療を行います。治療法は「厚生労働省特定疾患進行性腎障害に関する調査研究班IgA腎症分科会」から刊行されている、IgA腎症診療指針に基づいて行われます。治療には食事療法などの一般療法と薬物療法があります。

 

★食事療法

食塩制限とタンパク質の制限が主なものになります。IgA腎症の病状に応じて、食塩は1日6〜8gタンパク質は1日0.60.9gkg(標準体重)の摂取量となります。

日本人は比較的食塩を多く摂取しており、1日1112gの食塩を摂っています。塩は適度に摂らなくてはいけませんが、摂りすぎると高血圧の原因となったり、腎臓に余計な負担となります。

1日6gとなると半分程度まで減らさなくてはならず一度には大変ですから、まずは2割ずつ減らしていくことをやってみましょう。お味噌汁などの汁物は飲む回数を減らす、お新香だったらたくあんを5枚食べるところを2枚にしてみるとか、減らす工夫をしてみましょう。2割減らせた人はもう2割頑張ってみましょう。そうすると目標の食塩摂取量になります。

タンパク質の制限はそう簡単ではありません。肉や魚の量を減らすだけでは、なかなか目標値に達しません。お米や野菜などほとんどの食物に含まれています。またカロリーも適度に摂らないと、栄養に偏りもでてきます。食事療法については一度しっかりと栄養士さんとお話をしたうえで始めるとよいと思います。

食事療法ははじめからムリをしては長続きしません。できるところからコツコツと始めることが大切です。今日から厳格な食事制限をしなくちゃ・・・などと考えるとそれ自体が大きなストレスになります。担当医や栄養士さんと話していく中で、少しずつ完成させていく方がよいと思います。

 

薬物療法

日本で行われている治療には次のものがあります。

1.抗血小板療法・抗凝固療法

2.降圧薬による治療

3.ステロイド療法

4.扁桃摘出手術+ステロイドパスル療法

5. Fish Oil(魚油)

6.免疫抑制薬

 

いずれも腎生検の結果をみて、また今の尿の状態、腎機能をみながら治療を決めていきます。

1.抗血小板療法

塩酸ジラゼプはIgA腎症に保険適応のある薬剤で、尿タンパク減少効果があります。同じようなお薬でジピリダモール(慢性糸球体腎炎に保険適応)にも尿タンパクを減らす効果があります。尿タンパク量が減少することは腎機能を維持するために重要ですので、タンパク尿がある患者には補助的に使います。主な副作用に頭痛がありますが、ゆっくり投与量を増やしていくことで症状が緩和されます。

 

2.降圧薬

高血圧を合併している患者さんには降圧薬を使います。目標の血圧は130/80です。1日尿タンパク量が1gを超える患者さんはさらに厳しく、125/75まで抑えることが推奨されています。なかなか難しい目標値ですが、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARBを軸に血圧を下げていきます。降圧薬にはいろいろなタイプのものがありますが、ACE阻害薬やARBには尿タンパク減少をはじめとした、腎保護効果が確認されています。目標値まで達しない患者さんには、他の降圧薬も組み合わせて使っていきますが、特別に使ってはならない状況でなければ、積極的に使用したい薬剤です。

ACE阻害薬やARBは、妊娠可能年齢にある女性には注意が必要な薬剤です。妊娠をしている方は飲んではいけませんIgA腎症は比較的若い方に多い病気なので、妊娠の可能性のある女性は注意してください。

 

3.ステロイド療法

副腎皮質ステロイドには抗炎症作用があり、腎炎の治療に幅広く用いられています。IgA腎症では従来、ステロイド剤はあまり使われなかったのですが、この10数年で主要な治療薬のひとつとなりました。腎生検を行ったうえで、ステロイド剤の効果が認められると考えられた患者さんには副作用を考慮しながら、積極的に使用されています。

 

4.扁桃摘出手術+ステロイドパルス療法

この治療法は最近、日本で比較的多く行われています。風邪をひいた時に血尿が多く見られることから、以前から扁桃腺とIgA腎症の関係について注目されていました。実際に20年ほど前までは扁桃を取り除く治療はよく行われていたのです。ただ、長期的な腎機能保護効果に関する報告が十分ではなかったことから、扁桃摘出単独の治療はあまり行われなくなってしまいました。約10年前に扁桃摘出手術後にステロイドパルス療法を組み合わせることによって、血尿やタンパク尿が抑えられることが発表され、再びこの治療法に注目が集まってきました。

治療の実際は、まず口蓋扁桃を手術によって摘出します。その後、副腎皮質ステロイド剤を点滴と経口薬で投与します。ステロイドの投与方法は施設によって様々ですが、半年から1年くらいの期間投与されます。

この治療法はまだ世界的に認められた治療ではありません。特に日本以外の外国人研究者は否定的な見解をもっています。治療効果についてはまだ十分なデータは得られていませんが、それでも日本で行われているのは、治療を行っている専門医の多くは、効果に関してそれなりの感触を得ているからではないかと思います。どのような患者さんに効果があるのかがまだわかっておらず、長期的な腎保護効果が十分ではない現時点でこの治療法の是非に言及するにはまだ早いといえますが、主治医としっかり話し合った上で、この治療を選択するのは決して間違った選択ではないと思っています。

 

治療について解説しました。

次回はIgA腎症についてのまとめをします。

★IgA腎症が診断されるきっかけは?

この病気は血尿タンパク尿が出ることが特徴ですので、まずはおしっこに異常があるかどうかが重要になります。IgA腎症の患者さんの中には肉眼的血尿(目で見て分かる血尿)が出る人がいます。トイレに行っておしっこをしたら便器が真っ赤になった・・・こうなったら誰もが恐怖感を持って、ほとんどの方が病院に行くと思いますが、多くのIgA腎症の患者さんが病気と知ったきっかけは健康診断の尿検査による異常なのです。尿検査によるタンパク尿や血尿の検出感度は高いので、目で見て分からないような尿の異常に反応します。血尿というと真っ赤なおしっこを想像すると思いますが、病気を知るきっかけは尿潜血がほとんどです。尿潜血とはその名の通り、おしっこに潜んだ血液なのです。

 

★おしっこの異常が分かったら・・・

尿にタンパクや血液が出ていたら、迷わず腎臓内科に行きましょう。通常は尿検査をもう一度するはずです。早朝尿(朝起きて一番の尿)も検査します。慢性腎炎がありそうだというのは、繰り返しの尿検査でおおよその見当がつきます。血液検査も加えて慢性腎炎の見当がついたら、腎生検を行うかどうか検討します。IgA腎症の場合、疑われれば全例腎生検を行うべきだという見解もありますが、もし治療が行われるのであれば、そのタイミングも重要になります。IgA腎症は腎機能が悪くならない患者さんも少なからずいるので、治療のタイミングをみはからって腎生検を行うことが必要だと私は考えています。

 

 

★腎生検って?

腎生検とは腎臓の組織を一部採取して、顕微鏡などで診る検査です。血尿やタンパク尿というのは体に起こっていることで、腎臓病の病名ではありません。組織を診ることによって次のことがわかってきます。

① 正確な腎臓病の病名を確定すること

② 将来腎臓の機能がどうなっていくか(透析をしないといけなくなるのかなど)

③ 最も適した治療を決定すること

IgA腎症では病名を決め、治療を行うことはとても重要なことですが、将来腎機能がどうなっていくのか、見通しをたてるということも同じように重要です。IgA腎症になってみなさんが不安に思うことは、「透析をしなくてはならなくなるのかなあ・・・」「妊娠はできるのかしら・・・」「保険に入れなかったらどうしよう・・・」といったことだと思います。腎生検で不安が解消されることも多いので、そういったことも考慮しながら腎生検をするかどうか、患者さんと一緒に決めることが必要だと思っています。

 

★みなさんは尿の異常をそのままにしていないでしょうか?

IgA腎症など慢性腎炎による尿の異常は、痛みやかゆみなどの自覚症状を伴いませんIgA腎症はじわじわと腎臓を壊していく疾患です。発見が1年遅れてもすでに治療の一番良い時期を逃していたというケースも少なくありません。たかが尿潜血、タンパク尿と侮らず、専門医のもとで再検査を受けるようにしましょう。

 

次回はIgA腎症の治療について触れたいと思います。



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